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2020年3月の記事一覧

PTA広報誌 さきがけ 第86号 校長より

 3年生の皆さん、ご卒業おめでとうございます。1月には各学科の課題研究発表会を見学させていただきました。3年間の集大成ということで、各学科とも、大変見ごたえのある発表会だったと思います。

 さて、1月31日に、学校評価懇話会の一環として、5科合同課題研究発表会が開催されました。各学科から選抜された研究発表ばかりということで、ご覧になった学校評価懇話会委員の皆様からも、「楽しそうに研究している様子が伝わってきてとてもよかった」とのお褒めのことばをいただきました。

 発表会後の学校評価懇話会では、委員から「重点目標に『社会人基礎力を身につけさせる』とあるが、課題研究の取組が、社会人基礎力の育成につながるのではないか」とのご指摘をいただきました。

 そこで、3年生に尋ねます。「社会人基礎力」身に付いていますか。

 経済産業省でも、「人生100年時代の社会人基礎力」として、「これまで以上に長くなる個人の企業・組織・社会との関わりの中で、ライフステージの各段階で活躍し続けるために求められる力」と定義されています。本校でも「目指す学校像」を実現するための「重点目標」の一つに位置付け、3年間かけて、この「社会人基礎力」を皆さんに身に付けてもらうべく指導してきました。3年生の卒業を祝うにあたり、改めて確認してみたいと思います。

 この「社会人基礎力」は、大きく3つの力から構成されています。

 一つ目は、「前に踏み出す力」です。一歩前に踏み出し、失敗しても粘り強く取り組む力とされています。「主体性」「働きかけ力」「実行力」がここに含まれます。指示待ちにならず、一人称で物事を捉え、自ら行動できるようになることが求められています。

 二つ目は、「考え抜く力」です。疑問を持ち、考え抜く力とされています。「課題発見力」「計画力」「創造力」がここに含まれます。論理的に答えを出すこと以上に、自ら課題提起し、解決のためのシナリオを描く、自律的な思考力が求められています。

 三つめは、「チームで働く力」です。多様な人々とともに、目標に向けて協力する力とされています。「発信力」「傾聴力」「柔軟性」「状況把握力」「規律性」「ストレスコントロール力」がここに含まれます。グループ内の協調性だけに留まらず、多様な人々との繋がりや協働を生み出す力が求められています。

 いかがでしょうか。「前に踏み出す力」「考え抜く力」「チームで働く力」。どれをとっても、3年生の皆さんが一年間の課題研究を進める中で、必要とされた「力」だったのではないでしょうか。そして、その課題研究を終えた今、結構な割合で、こうした「社会人基礎力」が身に付いた、と感じている方もいるのではないかと思います。

 大学や専門学校へ進学される皆さんも、求められる力は共通していると思います。「人生100年時代」とのことです。皆さんは若く、前途は洋々としています。3年生の皆さんは、今後の様々なライフステージの各段階で、ぜひ、本校の3年間で身に付けたこの「社会人基礎力」を振り返るとともに、学び続ける姿勢を持ち続けていただきたいと思います。

 結びに、小島博子PTA・後援会会長様をはじめ、特に卒業生のPTA理事様、会員の皆様には、3年間にわたって本校を支えてくださいましてありがとうございました。今後とも、本校の応援団として、お力添えを頂戴できると幸いでございます。

第33回卒業証書授与式 式辞

 新しい命の息吹を感じるこの春の佳き日、卒業生の皆さんに卒業証書を授与いたしました。ご卒業おめでとうございます。

 さて、卒業生の皆さんへ、はなむけの気持ちを込めて、お願いがあります。

 私たちは、皆さんを「創造性あふれる技術者」、「地域に貢献できる技術者」になっていただくべく教育を行ってきました。だから、本校を卒業しても、「技術者」ということばにこだわっていただきたいと思っています。

 卒業式にあたり、改めて尋ねます。皆さんは、すでに「技術者」でしょうか。実感はありますか。

 皆さんを育ててきた本校の先生方も、みなはじめから「先生」であったわけではありません。かく言う校長先生も、教員生活の初めは、3月31日まで学生で、4月1日から「先生」という状態を経験してきました。進学される方はともかく、就職される方はこの4月1日からいきなり社会人という、同じような状況に置かれることと思います。

 およそ「先生」と呼ばれる職業は、自分のことを一人前の「先生」と思ってしまったところから、「おごり」の気持ち、「油断」とでもいうのでしょうか、そうした気持ちが生じてくるものだと思います。そうならないためには、一人前の「先生」なんて、そう簡単になれるものではない、だから毎日毎日、一人前の「先生」になろうとして、努力を続けることが大切になってきます。校長先生は、一人前の「先生」ということにゴールはない、それくらいに思っています。だから、毎日毎日、一人前の「先生」になるための努力を続けることが大切だと思うのです。

 この「先生」を、「技術者」に置き換えます。進学される皆さんも、いずれはなんらかの仕事につくことになると思うので、よく聞いておいていただきたいと思います。

 私たちは、皆さんに「技術者」になっていただくよう育ててまいりました。しかしながら、本当の勝負は、これからではないかと思います。私たちが目指す、校訓である「正確に、はやく、美しく」を身につけた「創造性あふれる技術者」、「地域に貢献できる技術者」は、一朝一夕になれるものではありません。社会に出た皆さんが、いつか本物の「技術者」になることを目指して、あるいはなろうとして、毎日毎日、努力を継続することこそが重要だと思います。皆さんが選択した職種が多様であることは十分承知していますが、どの職にあっても、極めたい仕事上の「技術」というものがあると思います。工業高校である本校を卒業する皆さんは、よい意味で「普通」であることに満足するべきではありません。いくつになっても、「技術」ということに、「技術者」ということばにこだわっていただきたい、そのように願っています。皆さんならすばらしい「技術者」に必ずなれる、そう信じています。

 最後にもう一度「卒業おめでとう」と言ってお別れしたいと思います。卒業後、10年、20年、30年と、年を重ねるごとに、わが人生の原点は、埼玉県立三郷工業技術高等学校での学びにあったと思っていただけることを信じて式辞といたします。

令和2年3月14日 埼玉県立三郷工業技術高等学校長 山本 康義